2009年12月14日

特別受益分

特別受益とは生きているうちに、被相続人(亡くなった人)から特別の援助を受けた場合(商売の資金援助、マイホーム資金など)に、これを無視して、相続分を計算するのは、不公平になるため、被相続人が生きている間にもらった分は、相続分の前渡しとして、計算することです。
具体的には相続される人(被相続人)には、奥さんと、長男と次男がいるとします。
長男にのみ、生きている間に、マイホーム資金として1,000万円を贈与していて、次男には、贈与はなっかたとします。
そして、遺産が、3,000万円だった場合、3,000万円に1,000万円を足した、4,000万円を分割する相続財産として、遺産分割します。
これを、法定相続分でわけると、奥さんが2分の1の2,000万円、長男が4分の1の1,000万円、次男が4分の1の1,000万円となります!
しかし、ここで、長男が1,000万円をマイホーム資金として、提供を受けていたので、これを差し引きます。
よって、長男の相続分は0円ということになります。特別受益分が最後に差し引かれます。

寄与分

寄与分とは生前、被相続人に対し特別の働きをした場合の相続できる権利のことです。

1. 相続人の中に、被相続人の事業を手伝った、金員などの財産の給付をした、病気を看病した、その他財産の増加などに特別の働きをした者がいる場合は、その者の働きの評価額(寄与分)を共同相続人間で協議して決定し、その評価額を相続財産から引いた残額を「遺産」と仮定して相続分を計算します。

2. 特別の働きをした相続人は、「遺産」の法定相続分にあらかじめ引いておいた評価額(寄与分)を加えた分が相続分となります。

3. 寄与分の存在やその額について相続人間で話し合いがつかない場合は、特別の寄与をした者は家庭裁判所に審判を求めることができます。

4. 家庭裁判所は、寄与の時期や、方法、程度、遺産の額などといった一切の事情を考慮して寄与分を決めます。

5. 寄与分の額は、相続開始時の財産の価格から、遺言により遺贈された価格を差し引いた額を超えることはできません。

遺留分

遺留分とは相続人に保証されている相続財産の権利のことです!

遺言書を作成すれば、法定相続人以外の者に全財産を遺贈することもできます。
しかし、それでは残された家族が住む家を失い、生活もできなくなるという事態も起こり得ます。

こうした、あまりにも相続人に不利益な事態を防ぐため、民法では、遺産の一定割合の取得を相続人に保証する『遺留分(いりゅうぶん)』という制度が規定されています。

相続人の遺留分を侵害する遺言も、当然に無効となるわけではありません。
遺留分を取り返す権利を行使するかどうかは相続人の自由であり、『自己の遺留分の範囲まで財産の返還の請求する遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせきゅう)』がなされるまでは、有効な遺言として効力を有します。

しかし、遺留分を侵害された相続人が、遺留分減殺請求権を行使すると、受遺者・受贈者は、侵害している遺留分の額の財産を相続人に返還しなければならず、返還する額をめぐって訴訟になるケースも多く見られます。

したがって、遺産をめぐる争いを防ぐ意味でも、相続人の遺留分を考慮したうえで遺言書を作成したほうがよいでしょう。

■ 相続財産に対する各相続人の遺留分

(1)直系尊属のみが相続人であるときは、被相続人の財産の3分の1
(2)その他の場合は、被相続人の財産の2分の1

兄弟姉妹には遺留分の権利はありません。
具体的な配分については相続人の内訳により異なりますので税理士等専門家にご相談下さい。

トラブルの原因

相続を「争族」トラブルにさせないでください!

普通、家族同士の場合、かなり性格や価値観が違っていても、中心となる親が生きている間は、そうあからさまにいがみ合ったりはしないものです。ところが、親が亡くなっていざ相続となると、相続税のあるなしにかかわりなく、遺産分割で収拾がつかなくなるケースが珍しくありません。相続が「争族」といわれるゆえんです。
争いの原因はいろいろありますが、今回は主に個々の相続人の態度や行為が問題となるケースを取り上げてみます。

相続人の1人が財産を独占する!

家業を継ぐ長男が、有無を言わせず強引に財産を独り占めするとか、親の面倒を見ていた子供が財産の大半を要求するケースです。
表向きの理由としては、親孝行の度合いや家業に対する貢献度が多いようですが、当然、その他の兄弟姉妹は黙っていません。
自分の法定相続分を主張し正面衝突することになります。

財産の全体像を明かさない!

判断力が衰えた親の財産の管理を、同居中の子供が代行するということはよくあることですが、不正に貯金を下ろして隠したりして、相続開始時に遺産の全体額がはっきりしないケースがあります。
遺産の額が不明な場合、家裁に調停を申し立てても、遺産の範囲が特定していないため調停作業ができません。
そこで、調停を一旦中断して遺産確定の民事裁判を提起し、その判決の結果を待って調停となることから、時間と費用がかかることになります。

遺産分割協議に応じない!

感情のもつれなどから、遺産分割協議に応じない相続人が1人でもいた場合は、遺産分割ができません。
遺産分割の成立には、相続人全員が合意し、遺産分割協議書に全員の実印の押印および自署が必要なためです。
また、分割協議に参加しない相続人がいると、預金を引き出すことができなくなります。
金融機関は、相続人全員が自署した同意書がないと、預金を解約してくれません。
中には、相続人同士の仲が悪く、話し合いの場所すら決まらないというケースもあります。
こうした場合は、初めから相続人同士による解決が不可能な状態にあるわけですから、家裁において調停・審判が必要となります。

欲張った主張する人がいる!

よく、最初は遺産を期待していない様子だったのに、遺産の額を知った途端、急に態度を変え欲張った主張をする相続人がいます。
得てしてこのタイプは、それまで親の面倒を見たことがなく、兄弟に迷惑をかけてきたという人に多く、頑固に法定相続分を主張する傾向があります。こういう相続人がいると、まとまるものもまとまりません。

税務調査

税務調査とは、相続税納税者が申告した内容が正しいものか、申告漏れなどがないかをチェックするために行われるものです。

日本の納税制度は自己申告が原則となっており、自分が納める税金について、税法に基づいて自分で財産額と税額を計算し、自分で申告することが義務付けられています。

しかし、すべての納税者が正確な申告を行っているとは限りません。

そこで、申告納税制度の公正な適用を維持する上で、 納税者が申告した内容が正しいかどうかを確認することが必要となります。

そのために行われるのが税務調査なのです。

さて、相続税の税務調査はどうなのか?

相続税の申告書を提出すると、半年から2年以内に税務調査が行われるケースが多いようです。

毎年、申告書の提出は4万5000件ほどありますが、このうち1万3000件程度に税務調査が入ります。

つまり、約30%の調査割合ということになります。これは法人税4%、所得税1%の実地調査率とは大違いです。

相続税の申告をした方は、その後、高確率で税務調査が入ると言うことを頭にいれておくべきでしょう。

その内容は、所得税や法人税の調査と違って「取りあえず確認のために調査を行う」というレベルではありません。

その証拠に相続税の調査が行われた場合は、約9割の確率で申告漏れが発見されています。

具体的には子供や孫の名前だけを借りた「名義預金」といわれるものがあります。

事前の銀行調査や郵便局調査により遺産の申告漏れを発見してから税務調査に来るため、 このような高確率での修正申告につながるのです。

相続税の申告

相続税は、「相続開始を知った日(通常は亡くなった日)の翌日から10ヶ月以内」に納付しなければいけません。

被相続人の住所の所轄税務署に申告書を提出します。

この期限内に申告・納付しなかった場合は、「加算税・滞納税」の対象になりますので注意が必要です。

遺産分割は時間がかかることが多いのも現実ですが、法律では10ヶ月と定められていますので、遺産分割がまとまらないので相続税が払えないといった、各自の事情は考慮されません。

もしもこの期限内に遺産分割がまとまらなかった場合は、とりあえず未分割のまま法定相続分で相続したとして申告、納税し、後日、改めて申告することとなります。

相続税早見表

相続税がどれくらいかかるのかと疑問に思われる方も多いかと思います。
下記の相続税早見表でおおまかな相続税額をご確認下さい。

配偶者がいる場合

※ 単位は千円です。
※ この表は、配偶者が遺産の2分の1を取得した場合の計算です。
※ 税額控除は、配偶者の税額軽減以外にはないものとしました。

相続税早見表【配偶者がいる場合】

配偶者がいない場合

※ 単位は千円です。
※ 法定相続人の中に相続を放棄した者があるときは、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数。
※ 養子がある場合には、養子の数は、実子がある場合には1人、実子がない場合には2人に制限されます。
(ただし、税負担回避の養子は認められません。)
※ 負担率は小数点以下、税額は1万円未満を四捨五入しました 。

相続税早見表【配偶者がいない場合】

控除の種類

相続税による税額控除は6種類あり、税額控除が適用されると、その分については控除されます。

つまり当てはまるものは全て適用を受けたほうがいいでしょう。

1. 配偶者控除(配偶者の税額軽減)

1. 配偶者が相続する割合が法定相続分以下の場合は相続税はかかりません。
2. 配偶者が相続する財産が1億6,000万円以下の場合は相続税はかかりません。
のどちらか高い方になります。
但し、この制度を利用するためには、原則として期限内(10ヶ月以内)に遺産分割協議を完了させて、相続税の申告と納付を済ませておかなければなりませんのでご注意ください。

2. 未成年者控除

法定相続人に未成年者がいる場合は、未成年者が20歳に達するまでの年数1年につき、6万円が控除されます。
※相続開始時の年齢が1年未満の端数は1年として計算します。
6万円×(20歳-相続開始時の年齢)=未成年者控除額

3. 贈与税額控除

贈与税額控除とは、贈与税と相続税の二重課税を防止するために設けられている規定です。
相続開始前3年以内の贈与財産は、相続税の対象として加算されますが、贈与税を既に払ってる場合には相続税から控除できます。

4. 障害者控除

1. 法定相続人が一般障害者の場合は、対象者の年齢が満70才になるまでの年数1年につき6万円が控除されます。
6万円×(70歳ー相続開始時の年齢)=一般障害者控除
2. 法定相続人が特別障害者の場合は、対象者の年齢が満70才になるまでの年数1年につき12万円が控除されます。
12万円×(70歳ー相続開始時の年齢)=特別障害者控除
※相続開始時の年齢が1年未満の端数は1年として計算します。

5. 相次相続控除

相次相続とは、相次いで相続が起きる事をいい、短期間に相次いで相続があった場合における加重負担を防ぐために設けられています。
10年以内に2回以上の相続が続いたときは、前回の相続にかかった相続税の一定割合を、今回の相続税額から控除できます。

6. 外国税額控除

相続により取得した財産が国外にある場合、その国外財産について相続税に相当するものが課税されている場合は、二重課税を防止するために国内で一定の税額を相続税額から控除できます。

相続税とは

相続税とは、相続または遺贈により財産を取得する際に、一定以上の財産がある場合に相続する遺族に課せられる税金です。
相続税には、基礎控除があります。

遺産の評価額から故人の債務(借金など)や葬儀費用を控除した課税価格の合計が、基礎控除の金額以下であれば相続税はかかりません

相続で得た財産 - 債務や葬式費用 = 課税価格の合計額≦基礎控除額
※基礎控除額とは3,000万円 + 法定相続人数 × 600万円

計算例

相続で得た財産 9,000万円
借金 0円
葬儀にかかった費用 500万円
相続人 4人

3,000万円 + 600万円×4人 = 5,400万円(基礎控除額)
9,000万円 – (0円+500万円) = 8,500万円(課税価格合計)

8,500万円(課税価格の合計) ≧ 5,400万円(基礎控除額)

この場合、課税対象額の合計が基礎控除額よりも多いため、相続税が発生します

相続税の計算は、課税遺産総額を各相続人が民法の規定により法定相続分に応じて取得したものとみなして、各人ごとの相続税を求めます。これらを合計したものが相続税の合計となります

ただし、実際の遺産の持分は法定相続通りにはいかないこともあります。

算出が難しい場合もございますので、専門家に相談することをおすすめします

手続きに必要な書類

相続では、思った以上に多種多様な確認書類を必要とします!

相続財産を誰にどのように分けるのか、それについてすべての相続人が合意したことを証するため相続人全員の印鑑証明が必要です。
遺産分割協議書への署名捺印が、本人によってなされていることを証するため相続手続きを進めると言っても、不動産・預金・貯金・株券など相続財産の名義変更を行うには、必要とされる書類を揃えるしかありません。
いくら、「死んだおじいちゃんに可愛がってもらっていた!」と手続き窓口で叫んでもだれも相手にしてくれません。

では、どんな書類が必要とされているのでしょうか?
不動産でも預貯金でも大きく分類して3つの書類が必要とされています。

1. 相続する権利のある人(法定相続人)は、だれかを確認できる書類

被相続人の出生から死亡までの戸籍など、および相続人の戸籍・住民票など
戸籍等の収集は、手間と時間を要します。
しかし、最初にこれをやっておかないと、思わぬ相続人が後で現れたりして大事件になるケースもあります
いずれ手続きで必要となりますので、早めの準備をお勧めしています。
このホームページにもやり方を解説してありますが、私どもの事務所でも相続関係図の作成を含めお手伝いできます。
実際、役所へ出向いてご自分ではじめたものの、たいへんな作業であることがわかりご依頼されるケースが多くあります。

2. その遺産をだれが相続するようになったかを証明する書類

遺産分割協議書、遺言書など「遺産分割協議書であれば相続人全員の実印・印鑑証明が必要」などシビアな要件が設けられているケースが多く、手続き窓口でよく確認することが大切です。
金融機関には、相続人全員の実印・印鑑証明添付のうえ代表相続人(相続人を代表して相続財産を金融機関より受ける人)を選任するという旨の書式が準備してあります。

3. 名義変更の申請書

名義変更する窓口により申請書は異なります。
銀行ごとで異なる書式です。
例外もありますが、基本的にこの3種類の書類の準備が必要なのです。
それぞれの窓口で決まった書式が準備されているのが普通ですから、あまり神経質になる必要はありません。

不動産の名義変更

法務局では誰でもその不動産が誰の物であるか、担保などがついているかどうかが記載されている登記簿を閲覧できるようになっています。
相続が起こった場合、被相続人名義の不動産登記簿を相続人名義に変える手続きをしなくてはなりません。

なお、不動産の名義を変更せずに、トラブルになることがよくありますので、速やかに名義変更の手続きを行うことをお勧めいたします。

以下で不動産の名義変更の手続きを解説していきます。

大まかな手続きの流れ

遺産産分割協議の終了

登記に必要な書類の収集

登記申請書の作成

法務局への登記の申請

手続きのすすめ方

1. 登記に必要な書類の収集

登記に必要な書類はどのように遺産分割の協議が行われたかによって必要な書類が異なってきます。具体的には以下のとおりです。

法定相続人が一人の場合または法定相続分で相続をする場合

・ 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍など
・ 被相続人の最後の住所を証する書面(住民票の除票、戸籍の附票など)
・ 法定相続人の戸籍謄本
・ 相続人の住民票
・ 相続する不動産の固定資産税評価証明書

遺産分割協議で決めた割合で相続をする場合

・ 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍など
・ 被相続人の最後の住所を証する書面(住民票の除票、戸籍の附票など)
・ 法定相続人の戸籍謄本
・ 法定相続人の住民票
・ 相続する不動産の固定資産税評価証明書
・ 法定相続人の印鑑証明書
・ 遺産分割協議書

2. 申請書の作成

登記の申請書の作成については状況によって複雑に変化するものなので、ここでの解説は控えさせていただきます。

3. 登記の申請

登記の申請書に集めた書類をまとめて、相続する不動産を管轄する法務局(登記所)に登記の申請をいたします。
提出した書類に不備がなければ1週間くらいで登記が完了し、不動産の名義が変更されます。

4. 登記の費用

登記を申請する際には税金(登録免許税)の納付が必要になります。
なお、そのときに必要になる税金(登録免許税)は固定資産税評価証明に記載されている不動産の価格に1000分の4を乗じた価格となります。(100円未満は切り捨てとなります)

なお、司法書士などの専門家に登記の依頼をした場合には、登記申請書の作成、法務局への登記の申請に加え、必要書類の収集などすべての手続きを司法書士に依頼できます。

なお、1つの土地を相続した場合に相続人で1つの土地を複数の土地に分ける場合(相続したのが200㎡の土地でAはその土地の南側100㎡、Bはその土地の北側100㎡という場合です。)には相続の登記の申請をする前に、その土地の測量を行い1つの土地を複数の土地に分ける「土地分筆登記」の申請が必要になります。

その手続きのあとに各相続人名義に相続の登記を申請することになります。

動産の名義変更

生命保険の受取手続

生命保険は請求しなければ、絶対に支給されません!

一般的に生命保険として思い浮かぶのは各生命保険会社の「生命保険」のことですが、そのほかに郵便局の「簡易保険」、勤務先での「団体生命保険」、会社経営者や幹部のための「経営者保険」などがあります。

どの生命保険でも請求人による支払請求の手続きがなされないかぎり、生命保険金は支払われません

一般的には、記入した死亡保険金請求書と一緒に、生命保険の証書、保険会社所定死亡診断書、被保険者(死亡した人)の除籍抄本もしくは住民除票、保険請求人の印鑑証明と契約時の印鑑、戸籍謄本、振込先口座番号、請求人の身分を証明するものを添えて、生命保険会社などへ提出します。

死亡保険金は、どんな理由があるにせよ2年以内(法規では2年以内と定められていますが顧客のために、3年以内としている保険会社も多い)に手続をしないと保険金を受け取る権利がなくなります。

提出した書類の誤りがなければ、保険会社から1週間ほどで保険金が支払われます。

また、勤務先などで、本人が知らないうちに団体生命保険に加入していることもあります
このような団体生命保険は、会社の急な支出に備えたり、慰霊金に当てる目的で、保険金の受取人が個人ではなく勤務先になっているケースも多いようです。

この点も一応勤務先に確認しましょう。

生命保険加入者(被保険者)が死亡した場合は、保険金受取人は「死亡保険金の受け取り手続」を行わなければなりません。

保険金が受け取れるかどうかは保険の種類、特約の種類などによりますので、早めに保険会社、代理店に連絡しましょう。

ちなみに「生命保険の死亡保険金」は、受取人が特定されている場合は受取人の財産とみなされますので、遺産分割における「相続財産」に含みません。

■ 生命保険金(死亡保険金)の受け取り手続

1. 保険金受取人が保険会社(代理店)へ通知
2. 生命保険会社から必要書類等が送付
3. 保険金受取人が必要書類等を提出し、請求手続きを行う
4. 生命保険会社による支払い可否判断
5. 支払い可と判断されると保険金受取人が保険金を受け取る

■ 生命保険金(死亡保険金)が受け取れない場合

・ 保険会社が定めた期間内の自殺。
・ 契約者、死亡保険金受取人が故意に被保険者を死亡させた時。
・ 戦争その他の変乱による死亡。

■ 死亡保険金を受け取る際に必要な書類

・ 保険金請求書(保険会社所定の物)
・ 保険証券
・ 死亡診断書
・ 故人の戸籍謄本
・ 保険金受取人の印鑑証明書
・ 保険金受取人の戸籍謄本
※必要書類は各保険会社、または保険の内容によって異なりますので、事前に確認しておきましょう。

銀行口座の名義変更

相続が発生すると、すべての口座は凍結します!

被相続人の名義である預貯金は、一部の相続人が預金を勝手に引き出すことを防止するために、銀行などの金融機関が被相続人の死亡を確認すると、預金の支払いが凍結されます。(一部葬儀費用は出してもらえる場合もありますが)

凍結された預貯金の払い戻しを受けるための手続きは、遺産分割が行われる前か、行われた後かによって手続きが変わります。

おおよその手続は以下のとおりです。
(なお、金融機関によって必要な書類等は異なりますので、それぞれの金融機関に直接お問い合わせください)

■ 遺産分割前の場合

遺産分割前の場合には、以下の書類を金融機関に提出することになります。
1. 金融機関所定の払戻し請求書(相続人全員の署名・実印による押印がされたもの)
2. 相続人全員の印鑑証明書
3. 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までのものすべて)
4. 各相続人の現在の戸籍謄本
この他、金融機関によっては用意する書類が異なる場合もありますので、直接問い合わせてみましょう。

■ 遺産分割後の場合

遺産分割協議に基づく場合、調停・審判に基づく場合、遺言書に基づく場合によって必要な書類が異なります。

■ 遺産分割協議に基づく場合

以下の書類を金融機関に提出することになります。
1. 金融機関所定の払戻し請求書(申立人の署名・実印による押印がされたもの)
2. 相続人全員の印鑑証明書
3. 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までのものすべて)
4. 各相続人の現在の戸籍謄本
5. 被相続人の預金通帳と届出印
6. 遺産分割協議書(相続人全員が実印で押印)
この他、金融機関によっては用意する書類が異なる場合もありますので、直接問い合わせてみましょう。

■ 調停・審判に基づく場合

以下の書類を金融機関に提出することになります。
1. 家庭裁判所の調停調書謄本または審判書謄本(いずれも家庭裁判所で発行を受けることができます)
2. 預金を相続した人の戸籍謄本と印鑑証明書
3. 被相続人の預金通帳と届出印
この他、金融機関によっては用意する書類が異なる場合もありますので、直接問い合わせてみましょう。

■ 遺言書に基づく場合

以下の書類を金融機関に提出することになります。
1. 遺言書
2. 被相続人の除籍謄本(最後の本籍の市区町村役場で取得できます。)
3. 遺言執行者の印鑑証明書
4. 被相続人の預金通帳と届出印
この他、金融機関によっては用意する書類が異なる場合もありますので、直接問い合わせてみましょう。

株券の名義変更

株式の名義変更は被相続人名義の株式が、上場株式か非上場株式かによって手続が異なります。

■ 上場株式の名義変更の手続

上場株式は証券取引所を介して取引が行われていますので証券会社と相続する株式を発行した株式会社の両方で手続をすることになります。

■ 証券会社における手続

証券会社は顧客ごとに取引口座を開設していますので、取引口座の名義変更手続を行います。
取引口座を相続する相続人は、以下の書類を証券会社に提出して名義変更しましょう。
1. 取引口座引き継ぎの念書
2. 相続人全員の同意書(証券会社所定の用紙)
3. 相続人全員の印鑑証明書
4. 被相続人の戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍
5. 相続人の戸籍謄本・株式を発行した株式会社における手続

証券会社で取引口座の名義変更手続が終了した後は、株式を発行した株式会社の株主名簿の名義変更手続をすることになります。
この手続に関しては証券会社が代行して手配してくれます。

■ 非上場株式の名義変更手続き

この場合取引市場がないので、それぞれ会社によって行う手続が変わります。
発行した株式会社に直接問い合わせましょう。

遺族年金

遺族年金は残された遺族の生活を保障してくれる制度です。

疾病や負傷によって、不幸にして亡くなった場合に、亡くなった方の年金受給権を遺族が引き継ぐといった形で、その遺族などの生活保障として「遺族年金」が各制度から支給されます。

あくまでも遺族の生活保障という意味合いの年金ですので、遺族には一定の要件があります。

家計を支えていた世帯主を失い、子供を養育している妻には手厚い制度であったり、残された18歳未満の子供には加算があったりします。

また、本人が自身の老齢年金や障害年金を受給する事となった場合には、支給停止となることや、併給されても制限を受けることがあります(1人1年金の原則)。

併給の場合には、遺族自身の選択によって、より有利なものを選ぶことができるようになっています。
ここでは、遺族年金の種類について見ていきましょう。

■ 遺族基礎年金

国民年金からの支給です。
一定の要件を満たした被保険者や老齢基礎年金の受給権者が死亡した場合に、その者の「子のある妻」又は子に支給されます。
年金額は、792,100円+子の加算額。(平成21年度)

■ 寡婦年金

国民年金からの支給です。
1号被保険者の夫が、老齢基礎年金を受けることなく死亡した場合に、「子のない妻」(65歳未満)に支給されます。
65歳からは妻自身の老齢基礎年金が支給されますので、寡婦年金は支給されません。
年金額は、死亡した夫が受け取るはずの老齢基礎年金額の4分の3に相当する額。

■ 死亡一時金

国民年金からの支給です。
1号被保険者であった者が、年金を受け取ることなく死亡した場合に、遺族に支給されます。
遺族の範囲は、生計を同じくしていた、配偶者 – 子 – 父母 – 孫 – 祖父母 – 兄弟姉妹のなかで、先順位のものに支給されます。
寡婦年金を受けることができるときは、選択により一方が支給されます(両方支給されることはない)。
死亡一時金の額は、保険料の納付期間により、120,000円から320,000円の範囲で支給されます。

■ 遺族厚生年金

厚生年金保険からの支給です。
厚生年金保険の被保険者又は被保険者だった者が死亡したときに、その遺族に支給されます。
遺族の範囲は、死亡した者によって、生計を維持されていた、配偶者子 – 父母 – 孫 – 祖父母で、先順位のものに支給されます。
年金額は、死亡した者の老齢厚生年金の額の4分の3相当額。

手続きの全体像

相続発生後、残された遺族の方は、各種様々な手続きをしなければなりません。
それは、死亡届や免許証の返還など、ご自身で進められる手続きから、不動産登記や相続税の手続き、財産評価、遺言の取り扱いなど、専門家が係わるべき手続きまで様々なものがあります。
また、それぞれの手続きに、「いつまでにやってください」という異なる期限が細かく設定されています。
これをやらずにいると、思いがけない問題が発生してしまいます。

例えば、
・ 期限を過ぎてしまい、受け取れるものが受け取れなくなった。
・ 余計な費用が掛かり、結果的に損をすることになってしまった。
・ 自分で出来る手続きを思いつくままにやってみたら、何度も同じ書類を集めるはめになったり、役所にたらい回しにされて無駄な労力ばかり掛かった。
・ 一応専門家にお願いしたが、相続専門でない資格者であったため、余計な時間がかかった上、高額な費用を請求された。
といった話をよくお聞きします。

本来であれば、静かに供養したいと思っているのに、手続きに追われて疲れ切って、葬儀の準備がまともに出来なくなってしまったり、費用ばかりが気になって、相続手続きのスケジュールを忘れてしまったり・・・と、相続手続きに追われるあまりに、多くの方が大変な思いをされてしまっています。
そのようなことにならないためには、
1. 自分がやるべき手続きのリストを作る
2. リストに締め切りを入れていく
3. 自分でやる事と、専門家に依頼する分を分ける
これらのことをしっかりと順序良くこなす必要があります。
代表的な手続きを表にしましたので、是非参考になさってください。

届出・手続き 説明 期限 手続き先
死亡届 「死亡診断書」とセットで 7日以内 亡くなった人の本籍地または届出人の住所地の市町村役場
死体火(埋)葬許可申請書 火葬・埋葬の許可をとるとき 7日以内
世帯主変更届 世帯主が死亡したとき 14日以内 住所地の市区町村役場
児童扶養手当認定請求書 世帯主が死亡して、母子家庭になったとき 世帯主変更届と同時 住所地または本籍地の市区町村役場
復氏届 配偶者の死亡後、旧姓に戻りたいとき 必要に応じて 住所地または本籍地の市区町村役場
姻族関係終了届 配偶者の死亡後、配偶者の親族と縁を切りたいとき 必要に応じて 住所地または本籍地の市区町村役場
子の氏変更許可申請書 配偶者の死亡後、子の姓と戸籍を変えたいとき 必要に応じて 子の住所地の家庭裁判所
改葬許可申立書 お墓を移転したいとき 必要に応じて 旧墓地の住所地の市区町村役場
準確定申告 1月1日から死亡日までの所得を申告する 4ヶ月以内 亡くなった人の住所地の税務署
運転免許証 返却 速やかに 最寄の警察署
国民健康保険証 変更事項の書き換えをする 速やかに 住所地の市区町村役場
シルバーパス 返却 速やかに 住所地の市区町村役場
高齢者福祉サービス 利用登録の廃止 速やかに 住所地の福祉事務所
身体障害者手帳・愛の手帳など 返却。無料乗車券などがあれば、一緒に返却 速やかに 住所地の福祉事務所
勤務先(在職中の場合)
死亡退職届 提出 速やかに 勤務先(手続きは勤務先で行う)
身分証明書 返却 速やかに 勤務先(手続きは勤務先で行う)
退職金 受け取る 速やかに 勤務先(手続きは勤務先で行う)
最終給与 未支給分があれば受け取る 速やかに 勤務先(手続きは勤務先で行う)
健康保険証 返却 速やかに 勤務先(手続きは勤務先で行う)

遺産分割協議

遺産分割協議の進め方

遺産分割協議は全員参加が大原則です。
相続人の確定、相続財産の確定が終わると、いよいよ遺産の分割方法について協議します。
相続財産をどのように分割するかは、遺言書がある場合にはそれに従います。(ただし、相続人全員の協議がある場合は、遺言と違う内容で相続財産を取得することも出来ます)
遺言書がない場合には、誰がどの財産をどれだけ相続するかを相続人間で話し合って決めることができます。
この話し合いを「遺産分割協議」といいます。
遺産分割協議は、通常次のような流れで進めて行きます。

1. 相続人を確定する

遺産分割協議は、相続人全員参加での承認が原則必要となります。
・戸籍謄本を取得して相続人を確定する。
・相続人の中に、未成年の子とその親権者がいる場合には、家庭裁判所に申立をして、特別代理人の選任という手続が必要です。
・相続人の中に行方不明者がいる場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申立てる方法と、失踪宣告の申立をする方法があります。

2. 相続財産の調査

相続財産を調べて財産目録を作成します。借金・クレジット・保証債務などのマイナス遺産も漏れなくチェックすることが大切です。

3. 相続財産の評価

土地、建物、株式などについて、それぞれの評価基準に基づき評価します。

4. 寄与分の協議

被相続人が生存中に、財産の維持や増加に特別に寄与した相続人がいる場合には、その寄与分を先に協議して差し引き、残りの財産について分割協議します。

5. 遺産分割協議

相続税の申告は死亡の日から10ヶ月以内ですが、遺産分割協議に期限はありません。

遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議書はモレがないように作成しましょう。
遺産分割協議書には書き方のポイントがあります。

1. 用紙

紙の大きさに制限はありません。

2. 押印

遺産分割協議書が数ページになるときは、相続人全員の契印が必要です。
登記所では、少しの記入ミスでも訂正を求めますので、できれば捨印があった方がいいでしょう。
捨印を押すのを嫌がる相続人がいるときは、チェックして間違いがないことを確認しましょう。
署名の後ろの実印の押印は、鮮明に押印する必要があります。
※遺産分割協議書に限らず、適当に押印する人がいます。
実印を押印する以上、印鑑証明書を付けるわけですから、鮮明に押印しましょう。

3. 不動産の表示

「不動産の表示」の記載は、登記簿(登記記録)に記載されているとおりに記載しましょう。
登記所は、登記簿(登記記録)に記載された不動産の内容でしか、判断しません。

4. 日付

遺産分割協議書の相続人が署名、押印した日付は、実際、遺産分割の協議をした日、あるいは、最後に、署名した人が、署名した日付を記入するようにしましょう。

5. 相続人の住所・氏名

必ず、相続人本人に署名してもらいましょう。
住所、氏名の記入は、印鑑証明書に記載されているとおりに記入することが、後々の紛争予防に役立ちます。

遺産分割協議書の注意点

遺産分割協議は、全員の話し合いがないと無効になります。
遺産分割協議書には決まった書式(書き方)はありませんが、いくつか注意点がありますのでおさえておきましょう。

協議は法定相続人全員で行わなければなりません。

遺産分割協議は法定相続人全員で行わなければ効力がありません。
戸籍調査の上、間違いの無いように注意してください。
全員の協議ですが、『全員が一堂に会して協議する』事までは要求されません。全員が承諾した事実があればそれでよいのです。
現実に、遺産分割協議書(案)を作成し、『この内容でよければ実印を押してください』と他の相続人に持ちかける方法がよく取られます。

法定相続人全員が署名・実印の押印をする。

厳密には署名ではなく記名でもかまいませんが、後々の紛争・トラブルを防ぐためにも署名するようにしてください。
印鑑は実印を使わないと、不動産登記や銀行手続ができません。

財産の表示方法にも注意が必要です。

不動産の場合、住所ではなく登記簿どおりの表記にしてください。
銀行等は、支店名、口座番号まで書いてください。契印が必要となります。
遺産分割協議書が用紙数枚にわたる場合、法定相続人全員の実印で契印してください。
遺産分割協議書には、実印の押印が必要ですが、それと共に印鑑証明書も添付してください。

遺産を確定する

相続財産には遺産分割の対象になる相続財産(いわゆる相続財産)と相続税の課税対象になる財産(いわゆるみなし相続財産)、そしてそのどちらにもならない財産(祭祀財産)の3種類があります。

確認できた財産がどれに当たるかで、扱いが異なりますので注意しましょう。

相続財産

亡くなった方が所有していた家、現預金、有価証券などの一般的な財産のことです。

手持ち動産

主な調査方法

現金、宝石、貴金属、骨董品など 亡くなった方の住まい、別荘等の家捜し、銀行の貸金庫の確認など
銀行預金、郵便貯金、株、債券等の金融資産 預貯金通帳、金融機関・証券会社からの郵便物で目星を付けて窓口で確認。
取引先が広範な場合は住所地近辺の主な金融機関をしらみつぶしに当たる。
住まい、収益不動産、別荘などの不動産 固定資産税納税通知書等で所在を確認後、当該自治体発行の名寄せ帳を取り寄せる

みなし相続財産

・亡くなった方が自分にかけていた子供を受取人に指定してある生命保険の保険金、退職金規定で配偶者が受け取ることになっている死亡退職金など
・取扱い
遺産分割の対象にならないが相続税の対象になる。相続を放棄しても受け取れる。

祭祀財産

・亡くなった方が所有していた墓所、仏壇など祖先を祭るために使われているもの
・取扱い
亡くなった方の指定、地方の慣習、家庭裁判所の審判等により、相続人の誰か一人が受け継ぐ。
相続税の課税対象にならない財産目録の作成
財産調査の結果は財産の名称、所在、金額など、目録にまとめます。また、調査の途中で管理や保全が必要な財産が見付かった場合は、早急に適切な管理・保全の手当てをしておきます。

相続人を確定する

相続人が誰になるのかを、『間違いのないように!』調査してください!

相続人が誰かは民法で決められています。
遺言や死因贈与契約がなければ相続人以外の人が相続財産を取得することはありません。
相続人以外の人はその相続に関しては部外者と言うことになります。

法定相続人

・配偶者

常に相続人になります。

・子(養子含む)

第一順位の相続人になります。子がすでに亡くなっていて、その代襲者がいる場合は、代襲者が第一順位の相続人になります。

・直系尊属

(亡くなった方の父母、祖父母など)
子がない場合は、直系尊属のうち、存命でもっとも親等が近い者が第二順位の相続人になります。

・兄弟姉妹

子及び直系尊属がいない場合、兄弟姉妹が第三順位の相続人になります。兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合、その子(甥、姪)が代襲して第三順位の相続人になります。
※甥、姪が亡くなっていてもその子は相続人になりません。
※配偶者と子(代襲相続人を含む)以外の相続人は、先順位の相続人がいない場合にのみ相続人になります。
つまり、実際に相続人として相続に関係する人の組み合わせは次の形しかありません。
・配偶者と子・養子(代襲相続人を含む)
・配偶者と両親(またはもっとも親等の近い直系尊属)
・配偶者と兄弟姉妹(含甥、姪)
・配偶者のみ
・子と養子(代襲相続人を含む)のみ
・両親(またはもっとも親等の近い直系尊属)のみ
・兄弟姉妹(代襲する甥、姪を含む)のみ
※子供とおじさん、おばさん(亡くなった方の兄弟)が遺産を巡って争うことは原則としてありません。

戸籍の追跡

実際に誰が相続人なのかを調べるために、亡くなった方の戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍等を出生から死亡まですべて取得します。
通常はこの段階で両親、子供、配偶者が確認できます。

隠れている相続人?

意外に思われるかもしれませんが、当初想定していた以外の相続人が見付かるケースは大変多いのです。
離婚・夫婦の死別を経験されている方の場合は、古い除籍に子供が見付かることがありますので注意が必要です。
兄弟が相続を想定している場合でも、婚外子(隠し子)が見付かって実は相続権がなかったというケースがあります。
亡くなった方の親が再婚している場合は、本人も知らない半血兄弟が見付かることが考えられるのです。
さらに、先に亡くなっている兄弟がいるとその子供が相続人になりますので、相続人が予想以上の数になることもよくあります。
この段階で調査の手を抜くと、後で隠れていた相続人から相続の回復を請求されて、すべてがやり直しになる可能性がありますので慎重に対応しましょう。

例え法定相続人ではなくても・・・

相続人ではなくても、遺言で「財産の一割を遺贈する」とか「財産の半分を譲る」と指定されていた人(包括受遺者と言います)は、相続人とほぼ同じように扱われ、後の遺産分割協議に参加することになります。

遺産の分割方法

相続が発生して、法要を済ませると、次は遺産の相続を考えなければなりません。
ここでは、遺産の相続の仕方を見てみましょう。
相続の方法には幾つか種類があります。
すべての財産を引き継ぐのか、すべての財産を引き継がないのか、条件付きで相続するのかその手法は様々です。
どのようなかたちがあるのか、相続すべきかどうかをしっかりと判断しましょう。

単純承認

まず、プラスの財産もマイナスの財産もすべて引き継ぐことを単純承認と言います。
単純承認はこれといった特殊な手続がいりません。
ただし、「相続しません!」「条件付で相続します!」という、ある種の宣言を3ヶ月以内にしなかった場合、自動的に単純承認、つまり、すべてを相続することになります。
ちゃんと覚えておきましょう。

相続放棄

相続財産はすべてがプラスの財産とは限りません。
借金などの債務ばかりのマイナスの財産もあります。
遺産が明らかなプラスであれば、単純承認して良いと思いますが、明らかなマイナスの場合は、「相続をしない」という判断をすることもできます。
それを相続放棄と言います。
つまり、被相続人の財産を放棄し一切の財産を相続しない方法です。
相続人が被相続人の死亡を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出して、それが認められれば相続放棄が完了します。
家庭裁判所で相続放棄の申立が受理されると、その相続人は初めから相続人ではなかったことになります。
ですから、その子や孫への代襲相続もありません。

限定承認

限定承認とは、相続で得た財産の範囲内で借金を返済するという条件で相続を承認する方法です。
財産を清算し、遺産全体がマイナスの場合でも、不足分を支払う必要がなくなる相続方法です。
借金を返して、財産の方が多ければ、差し引いた財産については取得することができます。
限定承認の手続も、相続放棄の宣言と同じく、相続開始を知った時より3ヶ月以内に、家庭裁判所に「限定承認申述書」を提出して行います。
法定相続人が複数いる場合には必ず全員で手続をしなければなりません。

相続放棄について

相続放棄とは

相続放棄とは、残った財産がプラスの財産が多くても相続せず、マイナスの財産が多くても債務の負担をしないことで、全ての相続を受け継がないということを意味します。
相続放棄すると、その法定相続人は最初から相続人でなかったということになります。

相続放棄の手続き

相続放棄の手続きは、原則として相続の開始を知ったときから3ヶ月以内に、家庭裁判所に対して「相続放棄申述書」を提出します。
家庭裁判所に認められれば「相続放棄陳述受理証明書」が交付され、この証明書が相続放棄をした証明となるのです。
3ヶ月を過ぎてしまうと、原則としてプラスの財産もマイナスの財産も全て受け継ぐという単純承認したとみなされます
相続放棄を検討されている方は、期限についての注意が必要です。

相続放棄の注意点

1. 3ヶ月以内に相続放棄をするかどうか決めることが出来ない特別の事情がある場合は、家庭裁判所に、「相続放棄のための申述期間延長」を申請することにより、この3ヶ月の期間を延長してもらえる場合があります。
2. 相続放棄は、自分の相続する権利全てを放棄するということなので、一部の放棄など条件をつけることはできません
3. 相続放棄は一度家庭裁判所に申述すると取り消すことができません
そのため相続放棄は相続財産がある程度はっきりした後に行うことをお勧めします。

相続放棄を選択するとき

マイナスの財産が明らかに多い場合相続争いなどに巻き込まれたくない場合に相続放棄を選択される方が多いです。
どのような選択をするかは一度専門家にご相談されることをお勧めします。

法定相続について

法定相続とは?

法定相続とは、遺言で相続分を指定していない場合に法律で定められた相続分で分けることを言います。
遺言書がなく、相続人の間での協議(遺産分割協議)が付かない場合に用いられるいわば相続の収拾策です。

遺言で法定相続人以外の人に財産を譲ったり、相続分を法定相続とは別に決めることもできます。
ただし、法定相続人の一定の人には遺留分というものがあり保護されていますので注意が必要です。

法定相続人とは?

法定相続人とは、被相続人(=相続される人)が亡くなったときに、相続する権利がある人のことです。
この権利は、法律で定められており、以下の人が法定相続人になることができます。

1. 配偶者(夫からみれば妻、妻からみれば夫)

ただし、婚姻関係のない内縁の妻や、愛人には相続権はありません。

2. 子供(=実子)、養子、内縁の妻や愛人の子供、胎児、あるいは孫、ひ孫

これらの人を直系卑属(ひぞく)といいます。
子供、養子が何人いても、民法上は全て法定相続人とみなします。
ただし、相続税法上の各種特典を受けることのできる法定相続人には、養子の数についての制限があり、実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人までしか認められません。

養子については、相続税法上では被相続人に子供がいる場合、法定相続人としては1人だけが認められます。
子供がいない場合は、2人までが認められます。

3. 父と母、あるいは、祖父母

子供や養子(直系卑属)が誰もいないときに、相続人になることができます。
父と母がいないときは、祖父母が相続人になります。
これらの人を直系尊属といいます。

4. 兄弟姉妹、あるいはその子供

子供や養子(直系卑属)及び父や母(直系尊属)がいないときにはじめて相続人となることができます。

以上が法定相続人となることができる人です。
遺産を相続する場合には、法律で相続順位が定められており、相続の有無はこの順位が優先されます。

相続の優先順位について

配偶者・・・相続順位はなく、常に相続権があります。
直系卑属・・・第1順位。配偶者と同様で、常に相続権があります。
直系尊属・・・第2順位。第1順位の相続人がいないときに相続権があります。
兄弟姉妹・・・第3順位。第1、2順位の相続人がいないときに相続権があります。

このように、上位の相続順位の人がいるときは、下位の人には相続権はありません。

相続分について

法で定められた相続財産の分配を「法定相続分」といいます。
法定相続分は相続人の構成状況によって定められていますので個々の事例によって異なります。

必ずしも法定相続分どおりの配分方法でなくとも問題ありません。
まず、遺言が最優先されます。
次に、相続人全員が話し合って(遺産分割協議によって)決めた配分方法も法定相続分に優先します。

各種届出について

相続が発生したら下記項目の手続きをそれぞれ期限までに行わなければなりません。

手続き・届出

手続き・届出の窓口

期限

必要書類

死亡届(戸籍) 故人の本籍地・住所地・死亡地・届出人の住所地の市区町村役場

7日以内

死亡診断書
火(埋)葬許可証交付申請 死亡届と同じ市区町村役場

7日以内

死亡届と同時に
世帯主変更届
(住民票)
住所地の市町村役場

14日以内

印鑑・国民健康保険証
準確定申告
(被相続人の確定申告)
被相続人の住所地の税務署

4ヶ月以内

確定申告書その他申告書類
運転免許証返却 住所地管轄の警察署

速やかに

運転免許証
健康保険証返却
健康保険停止・変更
国民健康保険:住所地の市区町村役場
健康保険:勤務先・社会保険事務所

速やかに

健康保険証被保険者資格喪失届
年金手帳返却
年金停止
国民年金:住所地の市町村役場厚生
共済年金:社会保険事務所

速やかに

年金手帳死亡診断書戸籍謄本
死亡退職届
(在職中の場合)
勤務先

速やかに

特になし
身分証明書返却 勤務先

速やかに

特になし

全体の流れ

相続開始後は通夜に始まり、葬儀、法要、お香典返し、納骨、挨拶状作成など大切な仕事がたくさんあります。
それらをひとつひとつこなすだけでも相当の気遣いと時間を費やすものですが、
ほぼ同時に相続手続きもしっかりとしていかなくてはいけません。
相続手続には、多方面、各種さまざまな申請が必要になりますので、しっかりと把握することが何よりも重要です。

相続全体の流れ

相続の流れ

注意点

死亡(相続開始)
葬儀の準備・死亡届の提出
死亡届は7日以内に行政に提出

葬儀等(葬式費用の整理)
遺言書の有無の確認
相続財産・債務の調査
遺言書は家庭裁判所の検認が必要
検認前の開封は禁止

※公正証書遺言は除く

相続人の確認 被相続人と相続人の戸籍謄本を取り寄せて調べます

相続放棄・限定承認
(3ヶ月以内)
相続放棄・限定承認の検討及び申立て
(申立てない場合は単純承認)

被相続人の所得税の申告と納付
4ヶ月以内)
相続財産・債務の調査
相続財産の評価・鑑定
準確定申告書の提出
評価の難しい財産は税理士など専門家に相談

遺産分割協議
(49日をめどに始める)
遺産分割を協議
相続人全員の実印と印鑑証明書が必要
納税の方法、延納・物納の検討

相続税の納付
(10ヶ月以内)
税務署に申告・納税

遺産の名義変更手続 不動産の相続登記など

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